【favori】新たな着物リメイクに挑戦していきたい 大西淳子さんインタビュー〈後編〉

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前編に引き続き、手芸作家の大西淳子さんにお話を聞きます。
 

着物のみだとリメイクの限界があるが、そこに何を加えるか、ということを提案したい

 
——これからはこんなことをしたいとか、ありますか?

古いものを取り入れるというのが自分のテーマなので、今後はその割合を増やしたいと思っています。ここ何年かは着物リメイクから遠ざかっていて、どちらかというとヨーロッパのテイストの作品が多くなっていました。

最近、ある方から古い着物一式を譲り受ける機会があったのですが、ダンボールで10箱以上もあって、その中から選んでいいと言われたんです。私が選ばなかったものたちはどうするんですかって聞いたら、処分するって言われて。それはちょっと…すごくいいものだったし、好きなものだけ取って帰るというのはあまりに身勝手な気がして。その時は一回家に帰って、すごく悩んだのですが、やっぱりいただきたいと思ってすぐに連絡して取りに行きました。そういう世の中に眠っているものってたくさんあると思うんです。着物は特にこのままなくしてしまうにはあまりにも惜しい。

私はいろんなものをリメイクするのですが、着物って本当にリメイクしやすい。むしろ、リメイクをするためにこういう作りになっているんだと思う。洋服は曲線で裁っていてリメイクしづらいけど、着物は直線のまま。布として再利用されるために生まれてきているものだと思う。だから私の力が及ぶ限り、捨てるのではなく何らかの形にリメイクして、もう一回使っていくやり方を提案していきたい。

——また着物のリメイクに注力なさるんですね。

そうですね、元々自分の原点は着物リメイクから来ているので、そこに戻る感じですね。最初の本を出したときに、「こういう本が欲しかった、こういう本を待っていたんです」とみなさんに言われた。その時から自分もそれなりにキャリアを積んできているので、もうちょっとできることの幅が広がっていると思うんです。これまでのノウハウを集積して、さらに進化した新たな着物リメイクにチャレンジしたいです。

今はいろいろ片付ける断捨離の時代ですよね。その中ですべて処分するのではなく、思い出の品を何点かでもリメイクすれば、自分の気持ちが収まることってあると思うんです。ちょっとがんばって、手元に置いておくことができて良かったな、捨てなくて良かったなと。

——それは今の時代にもマッチもしていますね。

10年前とは違った新たな提案を考えています。以前は着物とビーズの組み合わせがメインでしたが、もうちょっと広げて、ビーズ以外のものとの組み合わせや、バッグ以外のアイテムも紹介したいです。

やっぱり古い着物ですと、ちょっとした補強などが必要になります。こういう風にしたら強く使えるとか、底の部分や持ち手など、すり切れやすい部分は着物以外の布を使った方がいいとか、今までの経験でわかってきたことも取り入れてお伝えしたいです。

着物だけだとやはりリメイクの限界がありますが、そこに何を加えるか、というのが私が提案すべきことだと思います。ここにこういうものを足したら、おしゃれになりますよと。着物でそんなことやっていいの? それは思いつかなかった!みたいな。

——たとえばどんな使い方ですか?

着物に着物を重ねて、一枚の新たな布として使うとか。縫い縮めてみるとか。細いテープ状にして使ってもいいし。着物自体を加工して新たな素材として使う感じですね。あとはビニールなどをのせることでずっと使うこともできます。古いものも加工次第では気兼ねなく使える素材になる。

あるいは、着物の下に一枚布をのせてステッチをしておけば、たとえすり切れても下からまた違う布が見えてきて、それが使い込む味わいになる。古いことを悪い方に取らないで、すり切れるのが楽しみというのもありかと。

——すごくおもしろいです!日本中の着物が待っていますね。

全国行脚に行かないと(笑)。やっぱり一番眠っているものって着物だと思うんですよね。

最近もらった着物を少しずつほどいているんですけど、同じ方の中でもすごくいい着物と普段使いのものが混ざっていて、知らない方のストーリーを勝手にイメージしたりします。もし知り合いや身内の着物でしたら「この着物知っている」「あの時、お母さん着てたよな」とか、いろいろ思い出しますよね。着物をいただいた方にはお礼として、眼鏡入れなどの小物を作って差し上げるのですが、すごく喜ばれます。

——なんかただのリメイクではないですね。思い出のストーリーが詰まっている。

はい、自分のもう一つの軸として、新たな着物リメイクをやりたいです。一方でレースなどヨーロッパの素材をメインに使った作品も作り続けたいと思います。仕事って1個だけやるよりも、いろんなことをやることで、ここのノウハウをこちらに生かすこともできるし、相互に作用するかと。

 
〈以下の写真は、2005年に出版された「和柄の布合わせ」(日本ヴォーグ社刊 現在は絶版)より。約10年の月日を経て、さらに進化した着物リメイクを今後提案していきたい。〉

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〈ビーズで彩る半襟。着物からのぞく部分にビーズを散りばめれば襟元がぐっと華やぐ。〉

 
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〈帯にブロンズとシルバーのビーズでアクセントを。和と洋の布合わせが目を引くクラッチバッグと一緒に。〉

 
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〈足袋にもビーズや、ボタンをあしらって。表地と裏地の組み合わせを工夫するのも楽しい。〉

※ 撮影:尾山祥子

 
 

これでよしとしないで、考え続ける、終わりはない。ずっと進化し続けたい

 
——最後の質問ですが、大西さんが作品作りを通してしたいことってなんなのでしょうか。その情熱の源泉に興味があります。

今やろうとしている着物のリメイクも含めて、すべて縁だと思うんです。人との出会いや、材料との出会いなど、このきっかけひとつがなかったら、自分はこういう仕事をしていないと思うんですね。そのことを大事にしたいし、自分のところに縁があって来た素材に対しては、いい形で伝えていきたいなと。そこに真剣に立ち向かうことが、私の人間としての成長でもある。中途半端にこれで完成としないで、もうちょっと何かできるんじゃないかと思う。どんなお仕事でもそうですよね、もうちょっと良くしたい、という気持ちがありますよね。これでよしとしないで、考え続ける、終わりはない。そのことで自分自身が磨かれているというと大げさなんですけど、鍛えられている気がします。

——そういった人生観の厚みが、作品からにじみでているような感じがします。

たとえば、いい本とかに出会った時に、文字のみでこれだけ人を感動させられるのは本当にすごいと思う。優れたものに出会うと、人間はここまでがんばれるんだな、まだまだ自分はやれる部分があると。いろんな感動を受ける度に、人間の能力、努力というのは本当に果てしないと思いますね。

忙しい時や、疲れていると楽な方に図らずも行ってしまいそうになるけど、それではいけないと。成長したいし、もっとよくなりたい。幸い、それを見て理解してくだる方がいる。「先生、さらに進化してるわ」と教室の生徒さんが言ってくれる(笑)。

——それは励みになりますね。

財布のキットを出すときも必ずマイナーチェンジしています。同じものは出さない。ずっと進化している。

でも、難しくなることだけが進化ではないよね。そぎ落としてシンプルにすることも進化だと思います。そういった意味でもまた原点にもどって、新たなチャレンジをしたいと思います。

——新境地での作品たち、『favori』も楽しみにしています!


『favori』2月号のキットは大西さんデザインのゴブラン織りの長財布です。クラシカルなゴブラン織りの生地にビーズやスパングルを刺繡して、華やかな長財布を作ってみませんか。キットの詳細はこちらから。

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◎大西淳子 手芸作家。1997年から「ニードルワークマーブル」としてハンドメイド製品の企画・製作を開始。年に2回の新作発表の作品展を軸に、手芸雑誌への作品提案や講習会などを手がけている。http://www.needleworkmarble.jp

★ アンティークビーズと着物、古いもの同士のモダンなハーモニー 大西淳子さんインタビュー〈前編〉
★ ストーリーのあるバッグ作り 大西淳子さんの世界〈前編〉
★ 素材の良さを最大限に引きだす細やかな手仕事 大西淳子さんの世界〈後編〉


favori [ファヴォリ]

日常の小さなときめきや、お気に入りを探す雑誌『favori』です。

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◎キットお届け内容

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ゴブラン生地 …幅47×長さ30cm/グログラン生地(ピンク)…幅35×長さ36cm/綿ブロード(ミントグリーン)…幅30×長さ130cm/文鎮口金(アンティークゴールド)…幅19cm/ファスナー(ピンク)…13cm/芯地(薄手)…30×40cm/芯地(厚手)…24×31cm/プラ芯地…17×24cm/ビーズ…1式(13種類)

◎出来上がりサイズ
長財布:幅約20.5cm×縦11cm×厚さ4cm

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